今回は通常知られている最終稿ではなく、初稿1873年版が使用されました。これは去る7月24日に行われた第198回定期演奏会でのライブ演奏に続き、満を持して行われたセッションレコーディングです。第5番同様、ブルックナーに新たな光を当てた演奏が展開されました。
「ワーグナー」と題された第3番は各楽章でワーグナーの楽劇のモティーフや和声進行をちりばめた大作。初稿はこの引用が顕著で、演奏時間70分を超える規模の交響曲でした。その後の改作で現在演奏される頻度の多い最終稿が一般的になりましたが、ある意味このワーグナー色は薄れたともいえるでしょう。ブルックナーが最初に意図した"敬愛するワーグナーの音楽との融合"という観点で比較すると、この初稿に軍配が上がるのではないでしょうか。今回のレコーディングから飯森と山響がそのような問いかけをしています。
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YSO-Live Vol.4 ブルックナー交響曲 第5番 変ロ長調 原典版
飯森範親(指揮)/山形交響楽団
録音:2009年1月20-21日 山形テルサにて収録