静まり返ったホールに、スタッフたちが夜10時に集合してセッティングが始まる。深夜のドヴォルザークホールの録音である。
最近は室内楽やオルガンの録音は非常に減ったが、90年代は何時もチェコ・フィルの録音に並行して、必ずこのように深夜の録音を行った。
一度の出張で、数多くの制作をして旅費などを按分するために始めたのだが、キャニオン・クラシックスでは本体のオーケストラの録音を超えるほどの人気を誇ったシリーズだった。
ぼく達スタッフも若かったから、朝から夕方までチェコ・フィル、その後夕方から夜にかけて郊外の教会などで古楽器を録り、深夜ホールに戻ってまた朝の3時まで録音・・・というふうにしていた。; 当初、日本人は朝まで録音して気が狂っている・・・とチェコでよく言われたものだが、最近ではチェコ人たちもそのような慣習が出来た様子だ。
話は元に戻して、今回はオルガンのバールタとドヴォルザークの第7交響曲を録音している。今日は初日で、夜11時半くらいから翌2時までかけて、1、3、4楽章を録音した。
もう既出の第9番「新世界より」、第8番に続シリーズで、深夜のノイズの少ない(周りの交通量の減少によるところが大きい)シンと静まり返ったこのドヴォルザーク・ホールに、ステージ奥に鎮座する巨大オルガンの壮大な音が響き渡るのである。 ぼくと今日のソリスト、バールタは94年から録音を続けており、お互いに気心知れた間柄なので、緊張も無く、非常にリラックスしながらあっというまに2時間半くらいで3楽章分を録り終えた。 この録音はあと2日間続き、交響曲と、ブラームスのオルガン曲を数曲収録する。
今日は途中、ペダルを照らすランプの故障による修理のため50分くらい中断したが、それも焦ることなく、良いコーヒー・ブレイクになった。